従業員が亡くなったときの手続き早見表
死亡による退職は、通常の退職と税務の扱いが根本的に違います。最大の分かれ目は「死亡後に支給期が到来する給与は、本来の相続財産として相続税の課税対象になり、所得税の源泉徴収をしない」という点。会社がやることを時系列で並べました。
本表は2026年度時点の労働基準法・所得税法・相続税法・健康保険法等にもとづく一般的な情報です。実際の手続き・判断は公式情報および専門家にご確認ください。
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表1: 会社がやること(時系列)
| 時期 | やること | 提出先・注意 |
|---|---|---|
| 速やかに | 事実確認(死亡日・業務上か業務外か)、社内連絡、貸与物の返却依頼 | 業務災害・通勤災害の可能性があれば労災の判定を確認 |
| 死亡日の翌日から5日以内 | 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届(喪失日=死亡日の翌日) | 年金事務所・健康保険組合。保険証(資格確認書等)を回収 |
| 翌日から10日以内 | 雇用保険 被保険者資格喪失届(離職票は原則不要だが、遺族が請求する場合に必要となることがある) | ハローワーク |
| 翌月10日まで(退職月の翌月10日) | 給与支払報告に係る給与所得者異動届出書(住民税の特別徴収の停止・未徴収分の処理) | 市区町村。未徴収分は普通徴収に切り替わるのが原則(住民税(特別徴収)の年間早見表) |
| 権利者の請求から7日以内 | 賃金の支払と金品の返還(積立金・保証金・貯蓄金その他労働者の権利に属する金品) | 労基法23条。支払先は相続人。就業規則に受取人の定めがある場合はその定めによる |
| 支給時 | 死亡退職金の支給 | 受取人・支給額の確定時期を記録(相続税の非課税限度額の判定に影響) |
| その後 | 源泉徴収票の作成・交付、法定調書の提出 | 税務署・市区町村(法定調書の種類と提出期限) |
遺族が行う手続き(遺族年金の請求、埋葬料の請求、相続税の申告など)についても、会社から案内できると親切です。健康保険証・資格確認書等の返却もあわせて依頼します(マイナ保険証・資格確認書の早見表)。
表2: 給与・退職金の税務(ここが最大の分かれ目)
| 支給するもの | 所得税の源泉徴収 | 税務上の扱い |
|---|---|---|
| 死亡時までに支給期が到来している給与 | 必要 | 「給与所得の源泉徴収票」の支払金額欄に含める。この分を含めて年末調整を行う |
| 死亡後に支給期が到来する給与(死亡月の給与・未払残業代など) | 不要 | 本来の相続財産として相続税の課税対象。「給与所得の源泉徴収票」の支払金額欄に含めない |
| 死亡退職金(死亡後3年以内に支給が確定したもの) | 不要 | 相続または遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税対象。退職所得にはあたらず、「退職所得の源泉徴収票」の提出も不要 |
| 死亡後3年を超えてから支給が確定した退職金 | — | 受け取った遺族の一時所得として所得税の対象になります |
「支給期」は所得税基本通達36-9に定めるところによります(契約や慣習により支給日が定められている給与はその支給日、等)。「死亡日の前か後か」ではなく「支給期が死亡の前か後か」で判定する点に注意してください。
表3: 死亡退職金の相続税(非課税限度額)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 非課税限度額 | 500万円 × 法定相続人の数 |
| 対象 | 被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金・功労金その他これらに準ずる給与 |
| 「3年以内に確定」とは | ①死亡退職で支給される金額が死亡後3年以内に確定したもの ②生前に退職していて、支給される金額が死亡後3年以内に確定したもの |
| 法定相続人の数え方 | 相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数 |
| 注意 | 非課税の適用を受けられるのは相続人です(相続を放棄した人・相続権を失った人が取得した退職手当金等には適用されません) |
すべての相続人が取得した退職手当金等の合計額が非課税限度額以下であれば課税されません。生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)とは別枠です。
表4: 遺族が受けられる主な給付
| 給付 | 内容 | 窓口・請求期限 |
|---|---|---|
| 埋葬料(業務外の死亡) | 被保険者が亡くなったとき、埋葬を行った家族に5万円 | 協会けんぽ等。死亡した日の翌日から2年以内 |
| 埋葬費 | 家族がいないとき、埋葬を行った人に5万円の範囲内で埋葬にかかった費用 | 同上。埋葬を行った日の翌日から2年以内 |
| 家族埋葬料 | 被扶養者が亡くなったとき、被保険者に5万円 | 同上 |
| 遺族(補償)等給付・葬祭料 | 業務災害・通勤災害による死亡の場合(この場合、健康保険の埋葬料は支給されません) | 所轄の労働基準監督署 |
| 遺族基礎年金・遺族厚生年金 | 要件を満たす遺族に支給。未支給年金の請求も必要になることがある | 年金事務所・市区町村 |
遺族年金の支給要件・金額は個別の事情で大きく変わるため、必ず年金事務所にご確認ください。制度改正の予定もあります。
よくある質問
Q1. 死亡した月の給与から所得税を引くべき?
A. その給与の支給期が死亡後に到来するのであれば、源泉徴収は不要です。本来の相続財産として相続税の課税対象となるため、「給与所得の源泉徴収票」の支払金額欄にも含めません。一方、死亡時までに支給期が到来している給与(例: 死亡前に支給日が来ていた前月分の給与)は源泉徴収票に含め、この分も含めて年末調整を行います。
Q2. 未払給与は誰に払う?
A. 労働基準法23条により、権利者(相続人)の請求があった場合は7日以内に賃金を支払い、積立金・保証金・貯蓄金その他労働者の権利に属する金品を返還します。相続人が複数いる場合の分割方法や、就業規則に受取人の順位の定めがある場合の扱いについては、トラブルを避けるため支払前に確認してください。
Q3. 社会保険料はいつまで発生する?
A. 資格喪失日は死亡日の翌日です。社会保険料は「資格を喪失した月の前月分まで」が発生するため、死亡日の属する月の保険料は原則としてかかりません(月末に死亡した場合は喪失日が翌月1日となり、その月の保険料が発生します)。資格喪失届は5日以内に提出します。
Q4. 源泉徴収票は作らなくていい?
A. 作成・交付します。死亡時までに支給期が到来している給与について年末調整を行い、源泉徴収票を作成して相続人に交付します。死亡後に支給期が到来する給与と、死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金は、この源泉徴収票には含めません(「退職所得の源泉徴収票」の提出も不要)。
Q5. 弔慰金を出す場合の税務は?
A. 社会通念上相当と認められる範囲の弔慰金は、福利厚生費として取り扱われ、受け取った遺族側でも一定の範囲は相続税の課税対象外とされています。範囲を超える部分は退職手当金等として扱われます。金額の目安は慶弔金の非課税枠早見表をご覧ください。
Q6. 住民税の残りはどうなる?
A. 特別徴収していた住民税のうち未徴収分は、普通徴収に切り替えて相続人が納付するのが原則です。会社は給与支払報告に係る給与所得者異動届出書を市区町村に提出します。最後の給与や退職金から一括徴収するかどうかは市区町村・時期によって扱いが異なるため、所在地の市区町村にご確認ください。
関連する早見表
出典(すべて官公庁の一次情報)
- 国税庁 質疑応答事例「死亡後に支給期が到来する給与」 — 本来の相続財産として源泉徴収票の支払金額欄に含めない(表2の出典)
- 国税庁 質疑応答事例「死亡により退職した者の給与に係る源泉徴収票の交付」
- 国税庁 質疑応答事例「死亡による退職の場合」 — 退職所得の源泉徴収票の提出の要否
- 国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金 — 500万円×法定相続人の数(表3の出典)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「埋葬料・埋葬費」 — 5万円・請求期限2年(表4の出典)
- 労働基準法23条(金品の返還)/健康保険法100条(埋葬料)/所得税法9条1項17号・190条、所得税基本通達36-9/相続税法3条1項2号・12条1項6号 — 本表の法定根拠
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※ 本表は一般的な情報です。実際の手続き・判断は公式情報および専門家にご確認ください。相続・遺産分割・相続税の個別のご相談にはお答えできません。所轄の税務署・税理士・年金事務所へ。
最終更新: 2026-09-15