内定・試用期間の早見表(いつから労働契約か・解雇との違い)
「まだ入社していないから自由に取り消せる」「試用期間中なら簡単に切れる」——どちらも誤りです。内定の時点で労働契約が成立していると解され、取消しは解雇にあたります。試用期間中の解雇・本採用拒否も、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
本表は2026年度時点の労働契約法・労働基準法および確立した裁判例の考え方にもとづく一般的な情報です。個別の事案の有効性は事情によって異なります。実際の手続き・判断は公式情報および専門家にご確認ください。
📝 内定・試用期間 即答ボックス
表1: 段階ごとの法的な位置づけ
| 段階 | 位置づけ | やめるときの扱い |
|---|---|---|
| 採用選考中 | 労働契約は成立していない | 不採用(自由) |
| 採用内定(内定通知+誓約書の提出等) | 始期付解約権留保付労働契約が成立していると解される | 内定取消し=解雇。労働契約法16条(解雇権濫用法理)が適用され、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効 |
| 試用期間中 | 解約権留保付労働契約。労働契約はすでに成立している | 留保解約権の行使。通常の解雇より広い範囲で解約の自由が認められると解されるが、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であることが必要 |
| 本採用後 | 通常の労働契約 | 解雇(労働契約法16条) |
多くの裁判例は、試用期間中の使用者の留保解約権を試用制度についての当事者の合意にもとづく特別の権利ととらえ、通常の解雇よりも広い範囲の解約の自由を認めつつ、その行使には試用期間の趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であることを要するとしています。
表2: 内定に関する実務の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 労働条件の明示 | 労働契約の締結時に明示する義務があります(労基法15条)。内定時点で労働契約が成立していると解されるため、内定通知にあわせて労働条件通知書を交付するのが実務上の標準です(労働条件明示事項の早見表) |
| 内定取消しができる場合の例 | 誓約書等に定めた取消事由に該当する場合(学校を卒業できなかった、所定の資格を取得できなかった、健康状態が著しく悪化して勤務できない、履歴書等に重大な虚偽があった、刑事事件を起こしたなど)。ただし該当すれば当然に有効となるわけではなく、解雇権濫用法理の枠内で判断されます |
| 新規学卒者の内定取消し | 事業主は、あらかじめハローワーク(公共職業安定所)および学校に通知する必要があります。厚生労働大臣は、一定の場合に内定取消しを行った企業名を公表することができます |
| 内定辞退(本人から) | 期間の定めのない労働契約では、労働者はいつでも解約の申入れができ、申入れから2週間の経過によって契約が終了します(民法627条1項)。内定辞退を損害賠償等で妨げることは適切ではありません |
| 内定期間中の研修等 | 参加が義務づけられているものは労働時間として扱われる可能性があります(労働時間に含む・含まないの判定早見表) |
表3: 試用期間に関する実務の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解雇予告 | 試用期間中でも、雇い入れてから14日を超えて引き続き使用されている場合は、解雇予告(30日前の予告または平均賃金の30日分以上の解雇予告手当)が必要です(労基法21条ただし書)。14日以内なら予告は不要ですが、解雇そのものの有効性の問題は別です(平均賃金・休業手当・解雇予告手当の早見表) |
| 期間の長さ | 法律上の上限はありませんが、長すぎる試用期間は労働者の地位を不安定にするとして、公序良俗の観点から問題となり得ます。3か月〜6か月程度とする例が多く見られます |
| 延長 | 就業規則等に延長の根拠と事由が定められていることが前提です。根拠なく一方的に延長することはできません |
| 社会保険・労働保険 | 試用期間中でも、加入要件を満たせば入社日から被保険者です。「試用期間が終わってから加入」という運用はできません(入社手続きチェックリスト) |
| 年次有給休暇 | 試用期間も継続勤務期間に通算されます。入社から6か月経過時点で要件を満たせば付与が必要です(有給休暇の付与日数早見表) |
| 賃金 | 試用期間中に賃金を下げる場合も、最低賃金は当然に適用されます(都道府県労働局長の許可を受けた減額特例を除く。最低賃金の都道府県一覧)。就業規則・労働条件通知書に試用期間中の賃金を明記してください |
本採用を見送るときの進め方
- 就業規則の根拠を確認する — 試用期間・本採用の要件・解約事由が定められているか。
- 事実を記録する — 何を求め、どう指導し、どう改善しなかったのか。指導・注意の記録がないまま見送ると、合理的理由の立証が困難になります。
- 改善の機会を与える — 具体的な課題を伝え、期間を区切って改善を求める。
- 14日を超えているなら解雇予告 — 30日前の予告または解雇予告手当。
- 解雇理由証明書 — 労働者から請求があれば遅滞なく交付します(労基法22条)。
本ページは制度の位置づけを示すものであり、個別の内定取消し・本採用拒否の有効性を判断するものではありません。迷う事案は、実行する前に弁護士・社会保険労務士にご相談ください。
よくある質問
Q1. まだ入社していないのに解雇になるの?
A. 内定の時点で始期付解約権留保付労働契約が成立していると解されるため、内定取消しは解雇にあたります。したがって、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効です(労働契約法16条)。
Q2. 業績悪化で内定を取り消せる?
A. 経営上の理由による内定取消しは、整理解雇に準じて厳しく判断されるのが一般的な理解です(人員削減の必要性、回避努力、人選の合理性、手続きの妥当性)。新規学卒者の場合はハローワークと学校への通知が必要で、一定の場合には企業名が公表されることがあります。
Q3. 試用期間中の14日以内なら自由に解雇できる?
A. できません。14日以内なら解雇予告(または予告手当)が不要というだけで(労基法21条ただし書)、解雇そのものには客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。「予告不要=自由に解雇できる」ではありません。
Q4. 試用期間を延長したい。
A. 就業規則等に延長の根拠と事由が定められていることが前提です。根拠がある場合でも、延長の必要性と期間の相当性が問われます。あわせて本人への説明と同意の記録を残してください。
Q5. 内定者に研修を受けさせたい。
A. 参加が義務づけられている研修は労働時間として扱われる可能性があり、その場合は賃金の支払いが必要です。学業に支障が出ないよう配慮することも求められます。任意参加とする場合は、不参加による不利益がないことを明確にしてください。
Q6. 内定通知書だけで労働条件通知書は不要?
A. 労働条件の明示は労働契約の締結時に必要です(労基法15条)。内定時点で労働契約が成立していると解される以上、内定通知にあわせて労働条件通知書を交付するのが安全です。2024年4月からは就業場所・業務の変更の範囲などの明示事項も加わっています。
関連する早見表
出典(すべて官公庁の一次情報)
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「試用期間(裁判例)」 — 解約権留保付労働契約の考え方(表1の出典)
- 中央労働委員会「試用期間終了後の本採用拒否」[PDF] — 留保解約権の行使の要件
- 中央労働委員会「試用期間中の解雇」[PDF]
- 厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」 — 解雇・解雇予告のルール
- 労働契約法16条(解雇)/労働基準法15条(労働条件の明示)・20条(解雇の予告)・21条(予告の適用除外)・22条(退職時等の証明)/民法627条/職業安定法施行規則35条(新規学卒者の内定取消しの通知) — 本表の法定根拠
※ 本ページの表・数値は、上記の出典(公表値・法令の算式)をもとに当サイトが計算・編集(加工)して作成したものです。出典元の機関が作成したものではありません。
※ 本表は一般的な情報です。実際の手続き・判断は公式情報および専門家にご確認ください。個別の内定取消し・本採用拒否の有効性にはお答えできません。所轄の労働基準監督署・都道府県労働局・社会保険労務士・弁護士へ。
最終更新: 2026-09-16