労務・社会保険・税務の時効早見表(いつまで請求できる)
「何年前まで遡って請求されるのか」「いつまで還付を受けられるのか」——バックオフィスに関わる消滅時効を、労務・社会保険・税務の3分野に分けて、起算点つきで一覧にしました。書類の保存年数を決めるときの根拠にもなります。
本表は2026年度時点の労働基準法・社会保険各法・国税通則法等にもとづく一般的な情報です。実際の手続き・判断は公式情報および専門家にご確認ください。
⏳ 時効 即答ボックス
表1: 労務(労働基準法)
| 権利・期間 | 期間 | 起算点・備考 |
|---|---|---|
| 賃金請求権(給与・割増賃金・休業手当・年休中の賃金など) | 5年(当分の間3年) | 賃金支払日。2020年4月1日以降に支払われる賃金から適用(旧法は2年) |
| 退職手当(退職金)の請求権 | 5年 | 従前から5年。今回の改正による変更はない |
| 年次有給休暇の権利 | 2年 | 付与日。翌年度まで繰り越せるのはこのため |
| 労基法上の災害補償の請求権 | 2年 | — |
| 付加金の請求期間(労基法114条) | 5年(当分の間3年) | 違反のあった時。2020年4月1日以降の違反から |
| 記録の保存期間(労基法109条) | 5年(当分の間3年) | 帳簿ごとに起算日が異なる(法定三帳簿の記載事項早見表) |
対象となる賃金請求権には、金品の返還(労基法23条・賃金の請求に限る)、賃金の支払(24条)、非常時払(25条)、休業手当(26条)、出来高払制の保障給(27条)、時間外・休日労働等の割増賃金(37条)、年次有給休暇中の賃金(39条9項)、未成年者の賃金(59条)が含まれます。
表2: 社会保険・労働保険
| 権利 | 期間 | 起算点・備考 |
|---|---|---|
| 健康保険の保険給付を受ける権利(傷病手当金・出産手当金・埋葬料・高額療養費など) | 2年 | それぞれの給付ごとに起算点が定められている |
| 健康保険料・厚生年金保険料の徴収権 | 2年 | 納期限の翌日。遡って資格取得届を出す場合も原則2年が限度 |
| 年金給付を受ける権利(老齢・障害・遺族) | 5年 | 支分権(各支払期月ごとの年金を受ける権利)は5年 |
| 雇用保険の失業等給付を受ける権利 | 2年 | — |
| 労働保険料の徴収権 | 2年 | — |
| 労災: 療養(補償)等給付 | 2年 | 療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から |
| 労災: 休業(補償)等給付 | 2年 | 賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から |
| 労災: 葬祭料等(葬祭給付) | 2年 | 被災労働者が亡くなった日の翌日から |
| 労災: 障害(補償)等給付 | 5年 | 傷病が治癒した日の翌日から |
| 労災: 遺族(補償)等年金・一時金 | 5年 | 被災労働者が亡くなった日の翌日から |
| 労災: 傷病(補償)等年金 | — | 監督署長の職権により移行されるため請求時効はない |
| 労災: 未支給の保険給付・特別支給金 | — | それぞれの保険給付と同じ |
労災の療養・休業は「日ごと」に時効が進行します。数年前の分をまとめて請求する場合、古い日付の分から順に時効にかかっていく点に注意してください(労災の休業補償早見表)。
表3: 税務(国税)
| 権利・期間 | 期間 | 起算点・備考 |
|---|---|---|
| 更正の請求(納めすぎた税金の減額を求める) | 5年 | 法定申告期限から。平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について1年→5年に延長された |
| 税務署による増額更正ができる期間 | 5年 | 同上(原則3年→5年に延長) |
| 偽りその他不正の行為による脱税があった場合の更正・決定 | 7年 | 国税通則法70条 |
| 国税の徴収権の消滅時効 | 5年 | 法定納期限の翌日から(国税通則法72条) |
| 還付金・過誤納金の還付請求権 | 5年 | — |
| 地方税(住民税・事業税等)の賦課・徴収 | 原則5年 | 地方税法。詳細は各自治体へ |
帳簿書類の保存期間(法人税は原則7年〈青色欠損金が生じた事業年度は10年〉、消費税の帳簿・請求書等は7年)は時効とは別の制度です。保存年数は文書の法定保存期間一覧をご覧ください。
実務での使いどころ
- 未払残業代の遡及リスクを見積もる — 当分の間は3年ですが、本則は5年です。将来の延長に備え、賃金台帳・出勤簿は5年保存を前提に設計しておくと安全です(法定三帳簿)。
- 社会保険の遡及加入 — 保険料の徴収権が2年のため、遡及して資格取得できる期間も原則2年が限度です。加入漏れに気づいたら早期に年金事務所へ(社会保険の加入要件マトリクス)。
- 給付の請求もれ — 傷病手当金・出産手当金・埋葬料は2年です。退職者から問い合わせを受けたら、まず時効を確認します。
- 税の還付 — 過去の申告誤りに気づいたら、法定申告期限から5年以内なら更正の請求ができます。
よくある質問
Q1. 未払残業代は3年分?5年分?
A. 労働基準法115条の消滅時効期間は5年に延長されましたが、当分の間は3年とする経過措置が置かれています。したがって現時点で遡って請求できるのは3年分です。2020年4月1日以降に支払われる賃金から適用されており、それ以前の分は旧法の2年です。
Q2. 退職金も3年?
A. いいえ。退職手当の請求権は5年で、今回の改正による変更はありません(従前から5年)。退職金規程がある場合の請求権は退職日から5年で時効にかかります。
Q3. 有給が2年で消えるのはなぜ?
A. 年次有給休暇の権利が労基法115条の「その他の請求権」として2年の消滅時効にかかるためです。そのため、当年度に使わなかった有給は翌年度まで繰り越せる(=最大2年分を保有できる)という運用になります(有給休暇の付与日数早見表)。
Q4. 労災の請求は「事故から2年」?
A. 給付の種類によって違います。療養(補償)等給付は「療養の費用を支出した日ごと」に、休業(補償)等給付は「賃金を受けない日ごと」に請求権が発生し、それぞれの翌日から2年です。障害(補償)等給付は傷病が治癒した日の翌日から5年、遺族(補償)等給付は亡くなった日の翌日から5年です。
Q5. 税務調査は何年前まで遡る?
A. 更正・決定ができる期間は原則5年、偽りその他不正の行為による脱税があった場合は7年です(国税通則法70条)。なお、帳簿書類の保存義務期間(法人税は原則7年)は時効とは別の制度で、保存義務のほうが長いこともあります。
Q6. 時効は止められる?
A. 民法上、裁判上の請求等による時効の完成猶予・更新の制度があります(催告は6か月の完成猶予、協議を行う旨の合意による猶予など)。労使間の請求でも同様の考え方が適用されますが、要件は細かく定められています。具体的な対応は弁護士にご相談ください。
関連する早見表
出典(すべて官公庁の一次情報)
- 厚生労働省「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」[PDF] — 賃金請求権5年(当分の間3年)・付加金・記録の保存期間(表1の出典)
- 厚生労働省「労災保険の各種給付の請求はいつまでできますか。」 — 給付別の時効と起算点(表2の出典)
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「賃金請求権の消滅時効は、どのように変更されたのでしょうか?」
- 国税庁「更正の請求期間の延長等について」 — 更正の請求5年・増額更正5年(表3の出典)
- 国税庁「第72条関係 国税の徴収権の消滅時効」
- 労働基準法109条・114条・115条・附則143条/健康保険法193条/厚生年金保険法92条/雇用保険法74条/労働者災害補償保険法42条/労働保険の保険料の徴収等に関する法律41条/国税通則法70条・72条・74条 — 本表の法定根拠
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※ 本表は一般的な情報です。実際の手続き・判断は公式情報および専門家にご確認ください。個別の債権の時効の成否にはお答えできません。所轄の労働基準監督署・年金事務所・税務署・弁護士・社会保険労務士・税理士へ。
最終更新: 2026-09-15