バックオフィス早見表

給与から引いていいもの・ダメなものの早見表

「制服代を給与から引いていいか」「貸したお金を天引きで返してもらえるか」——賃金には全額払いの原則があり、勝手に引くことはできません。引けるのは法令に定めがあるものと労使協定を結んだものだけです。何が引けて何が引けないのかを判定表にしました。

本表は2026年度時点の労働基準法にもとづく一般的な情報です。実際の手続き・判断は公式情報および専門家にご確認ください。

✂️ 賃金控除 即答ボックス

原則は全額払い勝手に引けない
法令があれば協定なしで控除可税金・社会保険料
それ以外は労使協定が必要賃金控除協定
労使協定は届出不要事業場に保存
損害賠償の天引きは原則できない相殺は全額払い違反
欠勤・遅刻の控除は控除ではない働いていない分の不発生

表1: 賃金支払の5原則(労基法24条)

原則内容主な例外
通貨払い現金(通貨)で支払う労働者の同意による銀行口座等への振込み、資金移動業者の口座への資金移動(いわゆる給与のデジタル払い。労使協定と本人同意が必要)
直接払い労働者本人に直接支払う使者(病気の本人に代わる家族)への支払い。親権者・後見人・委任を受けた代理人への支払いは不可
全額払い賃金の全額を支払う①法令に別段の定めがある場合 ②労使協定がある場合(下の表2)
毎月1回以上払い毎月1回以上支払う臨時の賃金、賞与など
一定期日払い期日を特定して支払う同上。「毎月第4金曜日」のように変動する定めは不可

表2: 引いていいもの・ダメなものの判定

控除するもの可否根拠・条件
所得税・復興特別所得税(源泉徴収)○ 協定不要所得税法183条
住民税(特別徴収)○ 協定不要地方税法321条の5
健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料○ 協定不要健康保険法167条・厚生年金保険法84条
雇用保険料○ 協定不要労働保険徴収法32条
社宅・寮の使用料△ 労使協定が必要労基法24条ただし書
社内預金・財形貯蓄の積立金△ 労使協定が必要同上
労働組合費(チェックオフ)△ 労使協定が必要同上
購買代金・食事代・親睦会費△ 労使協定が必要同上
会社からの貸付金の返済△ 労使協定が必要同上。ただし前借金と賃金を相殺する契約は禁止(労基法17条)
制服・作業服の実費△ 労使協定が必要同上。就業規則に負担の定めも必要(労基法89条)
遅刻・早退・欠勤による不就労分○ そもそも控除ではないノーワーク・ノーペイ。働いていない時間分の賃金が発生しないだけ(就業規則の定めが必要)
制裁としての減給△ 上限あり1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えず、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えないこと(労基法91条)。就業規則に定めが必要
労働者の過失による損害の賠償× 一方的な天引きは不可全額払いの原則に反する。損害賠償請求は可能だが、賃金との相殺はできない。あらかじめ違約金・損害賠償額を定めることも禁止(労基法16条)
研修費用の返還(自己都合退職時)× 原則不可賠償予定の禁止(労基法16条)に触れやすい。業務性のない自由意思の受講で、返還免除つきの貸付として構成されている等の限られた場合を除く
過払いした賃金の翌月調整△ 限定的に可過払いの直後で、労働者の経済生活の安定を害さない時期・方法・金額であれば、実務上調整的相殺が認められると解されている

表3: 賃金控除に関する労使協定の要点

項目内容
締結する相手労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者(投票・挙手など民主的な方法で選出。会社の指名は不可、管理監督者は不可)
定める内容①控除の対象となる具体的な項目 ②各項目の控除を行う賃金支払日
届出不要(36協定と違い労働基準監督署への届出はいらない)。事業場に保存する
有効期間法律上の定めはないが、実務上は期間を定めて更新するのが一般的
注意点協定は控除を適法にするだけで、本人に支払義務のないものを引ける根拠にはならない。個々の労働者の同意や、就業規則・労働契約上の根拠も別途必要

よくある質問

Q1. 制服代を給与から引きたい。何が必要?

A. ①就業規則に労働者の負担とする定めを置くこと(労基法89条5号の相対的必要記載事項)②賃金控除に関する労使協定を締結すること、の2つが必要です。加えて、負担額が社会通念上相当な範囲であることも求められます。なお、業務に不可欠で会社が指定する制服の費用を全額労働者に負担させることは、最低賃金との関係でも問題になり得ます。

Q2. 従業員が会社の備品を壊した。弁償分を天引きできる?

A. 一方的な天引きはできません。賃金との相殺は全額払いの原則に反します。損害賠償を請求すること自体は可能ですが、労働者の故意・重過失の有無や会社の管理体制も考慮され、全額の請求が認められるとは限りません。また「壊したら◯万円」とあらかじめ金額を定めておくことは労基法16条で禁止されています。

Q3. 遅刻3回で1日分の給与カットは可能?

A. 遅刻した実時間分を差し引くのはノーワーク・ノーペイで問題ありませんが、実際の遅刻時間を超えて差し引くのは制裁としての減給にあたり、労基法91条の制限(1回の額が平均賃金の1日分の半額以内、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1以内)を受けます。就業規則に制裁の定めがなければそもそも行えません。

Q4. 給与を多く払いすぎた。翌月の給与から引ける?

A. 過払いの直後に、あらかじめ本人に予告し、金額が多額にわたらないなど労働者の経済生活の安定を害さない方法であれば、実務上「調整的相殺」として認められると解されています。安全なのは本人の自由な意思にもとづく同意を書面で得ることです。数か月分をまとめて引く、生活に響く額を一度に引く、といった方法は避けてください。

Q5. 退職者の未返却の貸与物の代金を最後の給与から引ける?

A. 同じく一方的な天引きはできません。賃金控除に関する労使協定に「貸与物の未返却時の代金」が項目として含まれており、かつ本人の同意がある場合に限られます。実務では退職時に貸与物リストで返却確認を行い、未返却なら別途請求するのが確実です(退職手続きチェックリスト)。

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出典(すべて官公庁の一次情報)

※ 本ページの表・数値は、上記の出典(公表値・法令の算式)をもとに当サイトが計算・編集(加工)して作成したものです。出典元の機関が作成したものではありません。

※ 本表は一般的な情報です。実際の手続き・判断は公式情報および専門家にご確認ください。個々の控除が適法かどうかの判断や、損害賠償請求の可否には回答できません。所轄の労働基準監督署・社会保険労務士・弁護士へ。

最終更新: 2026-09-13

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